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2010/06/14 (Mon)
康正話まとめ
手紙 後
康正視点。イサと王の間でグラグラ。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

勅使川さんが、また恋に悩んでる。一向に進展する気配のない恋。

・・・俺は、諦めるべきなのか、それとも想いを打ち明けてしまうか、わからないでいた。

「・・・なあ市ノ上。俺、どうするべきだと思う?」
「・・・告白すればいいだろ。あいつの事だからOKするだろうね。」
「何でだよ。勅使川さんは山奥先輩の事が好きなんだろ?どれだけ真剣かは見てわかるよ。」
「勅使川にとっては風間も大切な友達なんだよ。山奥先輩の事を半ば諦めかけているのもある。自分の気持ちを犠牲にしてでも、風間の気持ちを優先するだろうね。」
「それって・・・。」
「卑屈で、自己犠牲心が強いんだよ。勅使川は。」

・・・うん。それは、最近色々な事が起こって知った。
・・・そうか、無理してでも俺の為に付き合ってくれるのか・・・。
・・・安易に想像がついてしまった。

「・・・勅使川さんに無理はさせたくないよ。そんなの、虚しい。」
「付き合っていれば、いつか忘れるんじゃないか?」
「それでも、無理矢理過ぎるだろ。嫌だよそんなの。」
「勅使川の為にはいいかもしれないぞ。ズルズルと今の恋引きずるよりは。」

・・・そういうものか・・・。
だったら、いっそ腹を決めて告白してしまおうか。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

・・・なんて、やっぱり言える訳がなくて。

言った所で、他の人に向けた恋愛感情を押し殺した勅使川さんに、触れる勇気すら出ないだろうという予感もあって。

切り出すのが怖い。


勅使川さんと二人で下校。
必死に取り留めもない話題を探す。

・・・そういえば、ひとつ気になる事があった。
勅使川さん、噂だと市ノ上のマンションに出入りしてるらしいけど・・・。本当なんだろうか。
本当だとしたら、二人の関係って何なのだろうか。

ふと、その事を聞いてみた。

「市ノ上は一人暮らしなんだよ。あとは、・・・まあ、知り合い・・・友達?が半同居状態でいるから、居やすいんだよね。

うち、色々あって家に居づらくなる事が多いからさ、よく厄介になるんだよね。」
「一人暮らしの男の家に軽々しく上がり込むのってどうなの・・・?」
「大丈夫だよ。市ノ上がうちに変な気起こすなんてありえないし。それに、勉強会開く時とか、黒ゴマと那奈が一緒な事もあるよ。・・・何て言うか、自然に集合場所みたいになってんのかな。」

・・・そういうもんか・・・?
ちょっとよくわからないけど。

「しかし何で一人暮らしなんか・・・。」

「早く父親の元を離れたいって言ってた。

・・・だけど、それ以上は知らない。

うちはあいつに色々と助けられてるから、うちも助けになりたいんだけどね。何も話してくれない。

・・・あいつ、うちに壁作ってるみたいなんだよね。」

・・・市ノ上が勅使川さんに壁・・・?結構仲いいものかと思ってたけど・・・。

それに、一人暮らし・・・?父親から離れたい・・・?
気になる事だらけだ。

・・・そういえば、市ノ上って、何なんだ・・・?
最初はただのクラスメートで、勅使川さんと親しくなってから一緒にいる頻度が増えたけど・・・、あいつそのものをよく知らない事に気が付いた。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

翌日。
市ノ上に、昨日の事を話した。

「・・・へたれ。」
「うるさいな。それより、勅使川さんに壁作ってるってどういう事だよ。」
「ん・・・。壁ねぇ・・・。確かに少し距離を置くようにはしてる。
正直、勅使川の気持ちは重過ぎるんだよ。
本当に俺を信頼してる訳じゃない。
・・・こっぴどく捨てられたトラウマがあるから、必要とされる事が嬉しくて仕方ないんだ。
ただ都合よく使われてるだけだっていうのに・・・。

あいつは最初俺に劣等感を抱いてたんだよ。
妬んでたんだよ。
それが余計に、反動になってその感情を増幅させたらしい。
そのせいで勅使川は俺に少し変な好意を抱いてるんだよ。
それを裏切ったら・・・どうなるだろうね。だから今以上は踏み込めない。
さらに恋愛感情なんて抱かれた日には、それだけで足を掬われるに決まってる。それだけあいつは重いんだよ。

・・・だから、勅使川には本心を見せられないんだよ。」

・・・成る程。市ノ上というより、勅使川さんの心の問題か。
・・・

「・・・それだけ勅使川さんの事を理解してるなら十分じゃないの?」
「あまり懐かれると、後々邪魔になるんだよ。勅使川の事が嫌いな訳じゃない。でも、離れる時に痛みを伴わない位の距離を保たないと・・・何かが起こりそうな気がするんだよ。」
「・・・?」

「まあ、簡単に言えば、勅使川は精神的にかなりガタガタで、人に依存するタイプなんだよ。俺はただ、それに付き合える程の覚悟がないだけだ。」


「・・・後々邪魔って・・・父親から離れる為?」
「・・・勅使川から聞いたのか?」
「うん・・・まあ、あまり詳しくは聞いてない。」
「そうか・・・。あまり気にしなくていい。ただ、早く自立して、父親の影響が及ばない場所に行きたいと思ってる。」

・・・市ノ上は、そんなに父親が嫌いなのか・・・?
俺は父親に対してそこまで考えた事はなかった。



俺の中で、勅使川さんに対する想い以上に、市ノ上への興味が前に出て来た事に気が付いた。

・・・これなら、不毛な恋愛感情も忘れられるかもしれない。

もっと、こいつを知ろう。
まだ何も知らないこいつの事を・・・。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

康正の心がイサから王に移り始めたよって話。

交錯 後
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