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2010/06/14 (Mon)
康正話まとめ
手紙 前
前の続き。事件です。

--------------

‐‐‐‐‐王‐‐‐‐‐

「・・・あ・・・!」

勅使川の机が荒らされていた。
落書きや、器物破損。
見るに悲惨な状況。
どうしてここまで・・・。

「どうしよう・・・。受験対策のテキストまで・・・。これじゃ勉強できないよ・・・。」
「・・・あいつ・・・!ちっぽけな逆恨みで、人が将来の為に真剣にやってる事まで!」
「い、市ノ上・・・。大丈夫、余計な事はしないで。テキストは買えばいいんだし。
市川さんにとって1番苦痛なのは、うちの事で市ノ上に嫌われる事だよ。」
「知るか!・・・とりあえず、片付けるの手伝うから。・・・あー・・・教科書は見せてもらうアテあるか?」
「あんまり授業聞かないし、いいや。」
「・・・ああ、そうだなお前は。」

勅使川は努めて明るく振る舞おうとしているが、かなりショックらしく、指先が震えていた。


「ほら、案の定勅使川が悲劇のヒロインぶってる。」
「市ノ上もいい加減気付いて目を覚ませばいいのにね。」

・・・あいつら・・・!また勝手な事を・・・!

「くそ、あいつら絶対許せない・・・!」
「もう、市ノ上が怒らなくてもいいじゃん!あんたらしくないよ?本当に・・・余計な事はしないで。」
「余計な事だ!?あいつらの勝手な言い分黙って聞いてろって!?言われっぱなしでいいのかよ!」
「市ノ上は女の子達煽ってるだけなの!気付いてよ!」

「・・・市ノ上、勅使川さんの言う通りだよ。」

いつの間にか混ざって、黙々と片付けを手伝っていた風間が、ぽつりと言った。

「この件はもう手を出すな。俺がなんとかするから。今の市ノ上に、これを収めるのは無理だ。」
「知るか!俺はあの女の腐った性根が許せないんだよ!」
「そういう事言うから余計勅使川さんの風当たりが強くなるんだよ!!分かれよ!
確かに市ノ上が怒ってるのは勅使川さんの為だけど、味方になって戦えばいいって問題じゃないよ!怒ってばかりで根本的な所が見えてないだろ!」

・・・何が言いたいんだよ。つまりは。
・・・勅使川だけじゃなくて、俺の問題でもある。

納得いかないままで、終わらせられるかよ。

‐‐‐‐‐康正‐‐‐‐‐

・・・案の定、また市ノ上は、市川さんを責めていた。

これが女の子達刺激して、今回の事を引き起こしたというのに。


「・・・ち、違う!私がやったんじゃない!」
「君が手を出してなくても、女友達を煽ってやらせたんだろ?君以外に心辺りが無いんだよ。」
「悪いのはあの子なの!みんな嫌ってるんだよ!周り見ればわかるでしょ!?気付いてよ!」
「・・・勅使川を悪人に仕立て上げた、てめえの腐れぶりの方が呆れる!」
「・・・仕立て上げたなんて、言い掛かりでしょ!むしろあっちが・・・。」
「まだ言うか!言い掛かりはそっちだろうが!」

「市ノ上!やめろ!」

俺は、市ノ上と市川さんの、間に入る。

「市川さんはそれだけ市ノ上が好きって事だよね。
大丈夫。気持ちはわかる。くやしいよね。」

「え・・・。か、風間くん・・・?」

「市ノ上。この子が君に恋してるって事、よく考えて。ライバルの女の子の味方されたら、そりゃ嫉妬するよ。」
「ライバル?別に俺と勅使川はそんなんじゃ・・・。」
「市川さんにとっては同じだよ。市ノ上の言った事が、余計市川さんの嫉妬心を煽ったんだよ。市ノ上が言えば言うほど、彼女の中で勅使川さんが悪になる。だから、余計攻撃されるんだよ。
勅使川さんの事を思うなら、ここは諭さなきゃ。」
「まさかお前、市川の味方すんのか。調子に乗るぞ。」

「市川さんだって、内心では気付いてるでしょ?周囲の友達が味方ぶって盛り上がるから、後戻りできなくなっただけだよね。」
「・・・・・・。」

市川さんは、信じられないといった目を向けて来た。

「風間くん・・・。勅使川さんの味方じゃないの?」
「味方・・・多分味方かな。市川さんは、本当は勅使川さん悪くないって気付いてるよね。
・・・まだ遅くない。勇気を出して、きちんと謝って。
勅使川さんは市川さんの気持ち、ちゃんとわかってるから責めたりしないよ。」
「・・・・・・。」

市川さんは俯いて、泣き始めた。

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・!私・・・!」

市ノ上は、俺と市川さんの顔を交互に見て、信じられないといった顔をした。

‐‐‐‐‐王‐‐‐‐‐

・・・結局諭されたのは俺の方か・・・。

俺らしくないな。争いを起こさない方法はわかっていた筈なのに、それが出来なかった。

風間の方がよっぽど冷静だったな。


市川が、必死に女友達の誤解を解いていた。

あんな言葉一つで、態度を改めさせるなんて。

俺の怒りも、すっかり収まってしまった。

・・・何で俺はあんなに怒っていたんだ。
・・・本当に俺らしくない。一種の気の迷いか・・・。

‐‐‐‐‐勲子‐‐‐‐‐

「勅使川さん、本当にごめんねぇ・・・!」
「・・・いいよ。気持ちはわかる。うちも市川さんの立場なら、同じ事してたと思うし。」
「え・・・?」
「・・・うちも好きな人がいるんだけどね。その人が他の誰かと仲良くしてると、嫉妬心でいっぱいになって暴走するんだ。」
「え・・・?勅使川さんが?意外・・・。」
「だけどね、その人優しいから、ちゃんと止めて、諭してくれるんだ。市川さんにはそれが無かっただけで、同じなんだよ、うちら。」

「・・・あはは、悔しいけど完敗。勅使川さん、大人だね。私なんて、自分の事しか考えてなかった。

・・・私が市ノ上くんの事好きなんて・・・言う資格なかったね・・・。」

「資格なんて・・・そんなの無いよ。誰だって恋は自由にしていい筈だよ。」

・・・良かった。
きちんと話し合えば、わかりあえるんだね。

今までうちは諦めてたから誤解が広がっていったんだね。


・・・市川さんの事は、卑怯だとは思った。納得いかないと思った。

でも、それ以上にうちを見ているようだった。
だから余計に、理解できた。許せたんだ・・・。

‐‐‐‐‐市川‐‐‐‐‐

・・・市ノ上くんへの気持ちに諦めはついた。だけど・・・。


風間くんの事が、気になり始めてしまった。

暴走した私を、責める事なく窘めてくれた彼。
彼がいなかったら、私は深みに嵌まってもっとひどい事をしていたかもしれない。
彼の優しさが、心に浸みた。

・・・だけど。

――――・・・うちも好きな人がいるんだけどね。その人が他の誰かと仲良くしてると、嫉妬心でいっぱいになって暴走するんだ。
だけどね、その人優しいから、ちゃんと止めて、諭してくれるんだ。

これって・・・風間くんの事なのかな・・・?
きっとそうだ。

はは、私に勝ち目ないじゃん。
・・・優しさに揺らいだだけって思うことにしよう。恋心にはしない。それでいいや。

・・・今度は前向きな恋をしよう。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

王はあまり恋愛感情に理解ないイメージ。だからいくら計算高くても、恋愛感情からくるトラブルは対処できなかったら・・・いいな。

そんな訳で、なんか王が珍しく熱くなっててだれおまです。
康正が冷静なのもだれおまですが。

王と康正が、お互い別の一面を発見して、ちょっとお互い気にしだすといい。
いいねえ青春だねえ。

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