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2010/08/08 (Sun)
もっちりでの続き物のまとめ。
楠木時代の正也と千沙華の話。

兄さんの転落事故の後、この街に越して来たボクは、楠木に編入した。


誰にも心を開くつもりはなかった。
ボクは異常者だから。嫌われるに決まっている。




だけど、そんなボクに、何度も話し掛けて来てくれる子がいた。




「女鹿正也くん、だっけ?まさやんって呼んでいい?」
「・・・好きにすれば?」
「じゃあ、まさやん!よろしくね!」



彼女の名は、鈴木千沙華。

日だまりのような、暖かい女の子だった。




それからボクは、その女の子と仲良くなった。

彼女は、学校の事とか、色んな事を進んで教えてくれたし、周囲がボクの事を「不気味だ」と言っても、彼女は「違うよ!」とはっきりと言い切った。


彼女は真っすぐな人間だ。
そこに「気遣い」の色は見えなかった。


だからこそ、嬉しかった。


ボクにとっては唯一心を許せる友達になっていた。


・・・そう、ボクにとって、彼女は特別だったんだ。




清「千沙華お帰り~。・・・誰それ。彼氏出来たの?」
千「え?いや違う違う!勉強教えてもらうの!」
清「え?かざみ姉は?」
千「恐いんだもん・・・」


正(お・・・女の子の家に上がるなんて初めてだ・・・。いいのかな、彼氏でもないのに部屋にふたりきりで・・・。)

千「助かったよまさや~ん!ありがと~!これからもまさやんに教えてほしいな~。」
正「・・・いいよ。いつでも。だけど今の調子じゃ西水流合格できないからもう少し集中した方がいいよ。」
千「わかってるわかってる~」
正「・・・本当かな?」



正也とちさがそれなりに親しくなった頃の話。




そんなある日。



鈴木さんが、他の中学の制服を着ている男と一緒にいる所を見てしまった。



鈴木さんが、ボクには見せないような表情を見せていた。


一目でわかった。彼女にとって、その男は特別なんだと。






・・・何だよ。

ボクにとっては特別でも、彼女にとっては単なる友人の一人に過ぎなかったんだ。


裏切られた気分だった。
何を一人で舞い上がってたんだ。ボクは。



「ねえまさやん。明日うち来て勉強教えてよ~。」
「・・・ごめん、鈴木さん。もうキミの家には行けないよ。」
「え?何で何で~?」
「何でって・・・ボクも男だよ?彼氏でもない男を易々と部屋に入れるべきじゃないでしょ。」
「今更何言ってんの~?そんなの気にしなくても・・・」

「・・・ボクが気になるんだよ!鈴木さんは、ボクの事何とも思ってないんだろ!?
他に特別な人がいるなら、もうボクには関わらないでくれ!」
「・・・・・・!?」

・・・それから鈴木さんはボクに色々言ってきたけど、聞かないふりをした。

・・・再び、心は閉ざされた。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

師匠の所にはもう弟子入りしてる・・・かな?まだしてなくてもいいかも。

かざみとは面識ありません。
お互いを知るのは高校に入ってから。




心からボクを好きになってくれる人なんていない。


唯一、信じられるのは師匠だけだ。


・・・それでいい。





ボクは、女鹿正也という個性を捨てた。



空気のような存在になればいい。



誰に対しても、当たり障りのない行動を取っていればいい。





誰も、女鹿正也という人間を、見なければいい。





「まさやん・・・おはよう。昨日はごめんね・・・。無視、しないで欲しいな・・・。」
「ああ、鈴木さんですか。おはようございます。」
「何で敬語なの?・・・それに、どうしたの?その頭・・・。目も、なんでちゃんと開かないの?」
「フフ、ちょっとした心境の変化ですよ。」
「・・・やだ。まさやん気持ち悪い。戻して。」
「すみません。変える気はないので。」
「何で?ちさのせい?」
「誰のせいでもありませんよ。・・・ただ、ボクの為です。」



ボクの、身を守るため。
これ以上、裏切られないため。


‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

誤解のないように補足すると、ちさは原因ではなく一時的なストッパーです。

ちさがいなかったら最初からこうなってた。




かざ「今日、いとこがうちに来るんですよ。」
正「ああ、この前の背の高い女の子ですか?」
かざ「いえ、その子とは別の、同い年の、小さい女の子です。」




・・・と、かざみから聞いた時は、それがまさか彼女だとは思わなかった。


「鈴木さん・・・!?」
「まさやん・・・?何でここに・・・。」


驚いたけど、思ったより気分的に楽だった。

もう、彼女の事は何とも思ってない。

昔の気持ちは、もう忘れた。



それからは普通の友人として接するようになった。

鈴木さん・・・千沙華ちゃんも、ボクの事はさほど気にしていないようだった。




クラスメートの厳島さんに、やたら言い寄ってくる男がいる。


・・・誰かと思えばあの男、千沙華ちゃんと一緒にいた男じゃないか。




今は千沙華ちゃんの事は何とも思ってないけど、


・・・気に食わなかった。





キミは、彼女にとって特別だった筈だろ?

なのにどうして、他の女に現を抜かしてるんだよ・・・!




・・・キミにとって、彼女がその程度の存在なら、どうしてボクは、彼女の特別にはなれなかったんだ・・・!!






・・・なんて、ボクは何を考えてるんだ。


・・・馬鹿馬鹿しい。ボクは誰も信じないし、好きにもならない。


そうだよ。千沙華ちゃんも、あの男も、どうでもいいよ。人間としては。



問題は、被写体として映えるか映えないかだけだ。




まだ写真~前の話。

うしくん所と矛盾になるけど、この時点で二年です。
写真~を二年時の話にしないと、平八と正也の関係がサッパリ解消されてしまうので。




ちさ「まさやんって、恋人いるんだよね~?」
正「おや、何故知っているのです?」
ちさ「かざみから聞いたよ~!まさやんってかざみの彼氏なの?って聞いたら、『違います!正也くんには恋人がいますから!』って言った。」
正「まあ、いますけど。(男だけど)」
ちさ「ちさもね~、今ラブラブなんだよ~!」
正「へえ、意外ですね。」

(延々とのろけを聞かされる。)

正「・・・フフ、幸せそうで、いいですね。」




・・・よかった。姫宮くんとは別に、特別な人を見つけられたのか。



・・・これで、千沙華ちゃんの事も、吹っ切れる事ができた。


色々な事が起こって、忘れかけてはいたけど、ずっと心の隅に引っ掛かっていた感情は、

今、完全に解けた。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

これにて一先ず完。

ただ、正也の平八に対する誤解は解けないままという。
ちさの事が完全にふっきれたから、どうでもいい事にはなってそうだけど。

(ふっきれたとか言ってるけど、恋愛感情的なものは高校入った時点で完全無くなっていて、単に思い出として少し引きずっていたに過ぎない。そもそも中学の時に抱いていたものが恋愛的なそれだったのかも曖昧)
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